おさかな天国

今はただ、前へ泳ごう。

鶏の砂肝、酔った顔。

あなたの家の近くの店で飲んだ後、あなたの家まで歩く帰り道。ほろ酔いのまま2人で手を繋いで、右へ左へ、よろめきながら2人で歩く。お互いにふわふわした頭の中。その状態でならいつもは照れてしまって言えないことでも、勢いで口にできる。
「あなたのこと、本当に好きだよ」、「ずっと一緒にいてほしいって思う」。いつもだったら絶対に言えないこと。お酒の力を借りないと自分の本当の気持ちが言えないのはちょっと情けない。でも、こんな状態だからこそあなたに私に本音を伝えることができる。
大好きや愛してるなんて、恥ずかしがり屋の私にはそう簡単には言えないから、私はこうやってお酒の力を借りてしまう。私がお酒が好きなのは、あなたに素直な私の気持ちを伝える勇気を私にくれるからなんだけど、あなたはそれに気づいてるかな。
あなたはよく、「カヲルを記憶をなくすぐらいに酔わせたい」って私に言うよね。私はお酒にすごく強いから、多分あなたが期待するほどお酒に酔うことはないけれど、私もあなた以上に酔って、記憶がなくなるくらいにあなたに私の気持ちを伝えたいって思ってるんです。
私は自分の気持ちを隠したり、偽ってしまう癖があって、3年以上も付き合ってくれたあなたに対して伝えられていない本音がたくさんあります。私は自意識過剰なナルシストなのです、あなたはとっくにその事に気づいているかもしれないけれど。だから、私は大好きなあなたの前でも、着飾っていないとダメだと思ってしまうのです。あなたを信用できていない証拠ですね。あなたは私を全身で愛してくれていますね。あなたが私にくれる優しさや、あなたが私を抱きしめながら言ってくれる言葉から、その愛の大きさをいつも思い知ります。その愛の尊さを知っていながら、私はそれと同等の愛をあなたに伝えることができない。私のつまらないプライドのせいです。あなたがたまに、不安そうな顔を見せるのはそのせいだって分かってはいるんです、ごめんね。

そういう意味で、お酒は私に勇気をくれるんです。後先のことを考えずに、その時に思ったことをそのままあなたに伝える勇気を。
私はあなたに嫌われるのがとても怖いんです。あなたはいつも、私の本音を知ろうと努力してくれているよね。前に会ったとき、あなたが「カヲルのことが一番大事だから」って言ってくれたの、忘れないよ。私は自分に自信が持てないから、あなたがそうやって私のことを尊重してくれるのがすごく嬉しいんだ。でも、私は自尊心の低さからか、「どうせ自分のことが一番大事なんでしょう?」って思ってしまうんだ。そういう風に思ってしまう自分が嫌になります。あなたはきっと、本当に私に愛情を注いでくれているのに。相手の言葉の裏を勝手に読んで、補完して、そうやって自分を悲劇のヒロインに仕立て上げている。私の変な意地のせいで、あなたにも不快な思いをさせていると思うと、本当にこんな自分が嫌になってくる。
でも、お酒の力を借りれば変なプライドもかなぐり捨てて、あなたに本音を伝えられる。思ったことをそのまま、複雑な思考回路を通さずにあなたに伝えられる。それが嬉しくて、どうしてもあなたと一緒だと沢山飲んでしまうのです。

あなたはきっと、酔っていなくても、私の本当の気持ちを受け止めてくれる。あなたは優しい人だから。こんな私を受け止めてくれる人だから。
でも、私はお酒に酔った状態でないとあなたに本当の気持ちを伝えられない。大好きなあなただから、いつだって思ったことをそのまま伝えたいのだけど、それができないのです。

家で飲んでいたら、何故だかあなたのことが頭に浮かんだのです。自宅で両親と食べた砂肝炒めが美味しかったの。貴方とこれを食べたいって思った。こういう場面であなたの事を思い出す程度に、私はあなたの事を好きなんだな、と思うのです。そんな週末の夜。

 


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画像はイメージです。(笑)